3つのR



 彼も苦笑して更に端へ寄る。それから座ったままで、うーんと上下に伸びをして――――――呻いた。

「うっ・・・いたたたっ!」

「だ、大丈夫ですか?もしかして怪我は顔だけじゃなかったりします?」

 驚いた私がワタワタと聞くと、彼は身を縮めてははは、と苦しそうに笑った。

「もうちょっと避けれると思ったんだけどな、案外全身負傷だった」

 やっぱり年かな、小さく口の中で呟いている。・・・聞こえちゃったけど。

「昨日より・・・マシですね、目元は」

 恐る恐るそう言った私を見て、隣で彼は小さく笑った。

「ああ、そうか。昨日の俺の顔見て、確かに仰天してましたよね。幽霊のお岩さんみたいになってたからな」

「喧嘩ですか?」

 お岩さんって・・・まあ、確かにちょっとグロかったけれど。それにしてもえらく楽しそうに話すなあ~、喧嘩とか暴力とか、そういうのが好きな人なのだろうか。私はちょっと怯えながらそう聞く。こういう感じの男の人は今まで周囲にいなかった。怖いけど、得体の知れない怖さよりも好奇心が勝ったのだった。

 彼はうんと頷く。

「そうそう。この短気は治さなきゃとは思ってるんだけどね、柄の悪い客が来て、つい切れちまって・・・店で暴れちゃったんだよ」