3つのR



 そのタレ目とバッチリ視線があって、思わず私は動きを忘れる。・・・あら、綺麗な顔。そう思ったのだった。昨日よりはマシではあるが、色んな箇所が青かったり赤かったり膨らんでいたりしてやっぱりボロボロの痛そうな外見だった。だけど、公平に見て、この人はかなり格好いい男性だった。

 10秒ほどは無言で目があっていたけれど、彼は怪訝な顔のままで待っていた。そこで私はようやく、質問されたのかと気がついた。

 え?何かまってるよね・・・この顔。え、え?だけど、一体何て言えばいいの?私はよく判らなくて首を傾げる。自慢じゃないけど、賢いだなんて褒められたことなど一度もないのだ。元夫にも「のんびりさ~ん」などと頻繁にからかわれたものだった。

「・・・」

「・・・」

 こ、困った。彼も居心地が悪そうな様子。ああ、どうしよう。私は焦って両手を合わせる。

 落ち着くのよ、ゆっくり考えたら判るはず、そう思って懸命に答えを探る。彼は何て言ったっけ?・・・立ってる・・・立ってる?そりゃあそうでしょ、私は別に足なんて怪我してない―――――――あ、判った。

 彼の疑問がとけた、それが嬉しくて、ついにっこりと笑った。

「はい。昨日は、点滴打つためのベッドが空いてなかったので車椅子でやってただけですから」

 私が昨日車椅子に座っていたから、歩けない人だと思ったらしい。彼は手をパンと合わせて頷いた。

「ああ、そうなんだ。えーっと・・・とりあえず、座って下さい」