彼が叫んでガバッと身を起こす、それに驚いて私は仰け反って叫んでしまった。
あ、お、起きちゃった。あら、どうしよう。やだやだ、私ったらあまりにもじっと見ちゃったから・・・。し、失礼だったわよね、ああどうしたらいいの!私が脳内で大いにオロオロしていると、まだ垂れ目を見開いて驚いていたらしい彼が、ほお~っと大きく息を吐いて全身の力を抜いた。
焦った私は何とか言葉を押し出す。
「あ、のー・・・こ、こんにちは」
言ってから自分で情けなさに凹んだ。・・・ああ、私ったら。とりあえず驚かせたのだから、まずは謝るべきだったんじゃない!?そう思って。
だけど胸に当てていた手をするりと下ろして、男の人は口元を持ち上げた。どうやら笑ったらしい。
「・・・ああ、ビックリした。えーっと・・・邪魔、ですね、俺。すみません。」
そう言いながらパッと自分の足を下ろしてベンチの端へ寄る。
私は焦って手を振りながら言った。
「あの、いえ、大丈夫です。どうぞお休みになってください。私帰りますから」
「いや、いいよ。むしろ俺が消えるべきだよな。こんなところで寝ちまって――――――・・・って、あれ?」
ワタワタする私に手を振ってみせて、それからマジマジと私を見た。私の全身をザッと彼の視線が走る。少し怪訝そうな顔で、小さな声で彼が言った。
「昨日の人?だよな。・・・・でも――――――立ってるけど?」



