でも、私が頑張って食い下がると、姉はチラリと私に視線を飛ばして言った。

「お礼がしたいなら、次のデートでちゃんと自分の気持ちを確認してきて頂戴」

「え?」

 どういうこと?意味が判らないんですけど。私が首を傾げると、変わらない信号をチェックしてから姉が振り返る。

「潤子が右田君に惹かれていることは見ていて判る。だけど、まだ恋心までいってないみたいなのが悲しいのよ。あんたはまだ・・・バリヤーをはってるように見えるわ」

「・・・」

 バリヤーを。男性に対して。私は返事が出来ずにぼんやりと姉を見た。

「勿論無理やりである必要はない。だけど、どの関係にも一歩踏み出すべきときっていうのが一度はあるのよ。それが今よ、潤。彼を捕まえて、自分の心を確かめなさい」


 姉が信号変わったよ、と言って歩き出す。私はその後ろについていきながら、ああ、そうか、と思った。

 何か急いでいるように思える、姉のこの言葉は・・・。

 もしかして、今の生活が終わりに近いのだろうかって思ったのだ。

 私と住みだして3年目。姉は、自分一人の生活を犠牲にして妹の為に戻ってきた。仕事も自宅にして、いつでも支えてくれていた。

 それが・・・姉を苦しめていたのかも―――――――――――

 胸が痛かった。だけど、やっぱり黙って私は歩いた。

 私は一人で、次の日常を探さなきゃいけない、そんな時が来てるのかも・・・。


 その日は結局、朝も夕方もゴミ拾いはいけなかった。