声を出しかけて、パッと口元を両手で覆う。・・・寝てる、よね。規則正しく呼吸しているみたいだし、倒れてるんじゃないってことは・・・私は邪魔、ですよねー。
いつもならそのままくるりと背を向けて、そそくさと去ったはずだ。だけど、その時の私の視界には、キラリと光る何かが飛び込んできて、それが気になって振り返った。
木漏れ日が顔に当たるのも気にならないのか、その男の人は熟睡しているらしかった。目元の青あざ、切れたらしい口元、それから髪の間に光る青いアクセサリー―――――――・・・ピアス、だよねこれは。青い、3つのピアスだ。うわあ~3連なんて初めて見ちゃった!私は思わず凝視してもう少し顔を近づける。うーん・・・何というか・・・ルーズリーフみたい。
私は男性がぐっすりと眠っているのをいいことに、じりじりと近寄ってじっくりと観察する。・・・こういうの、痛くないのかな、とそこまで考えて、ようやく私は気がついた。
「あ」
この人、昨日の人だ!衝立に足を引っ掛けて、車椅子に倒れこんできた、あの男の人だ―――――――――
声は小さかったはずだ。だけれども、やはり人に見られていると気になるらしい。熟睡していたと思った男の人が、いきなりパチッと目を開いた。
そして私が固まっている間に何度か眩しそうに瞬きをして、組んでいた腕を解き、体を起こそうとして―――――――私に気がついた。
「うわあっ!?」
「ひゃあ!」



