薬を貰って会計を済ませながら、ざわめく病院の中を見回す。ふと、中庭の光溢れる緑色の空間に目が行った。普段はあまり行かない中庭。そこはキラキラしていて、風が緑を揺るがせ、とても温かくて気持ち良さそうな場所に思えた。
私は吸い寄せられるようにフラフラと中庭へ出て行く。
初秋の風が細めた瞼や髪を撫でて通っていくそのあまりの気持ちよさに、ついその場で深呼吸をした。
中庭の緑や芝生が風で揺らいでいた。そこここに散歩をしている人の姿があって、私はゆったりとした気持ちになる。
気持ちいい。もうちょっとだけ、ここで光を浴びて行こうかな。
そう思って見回すと、少しばかり奥まったところに木陰になったベンチを発見した。そちらを目指してゆっくりと歩いていく。すると、近づくにつれてそのベンチに横たわる大きなものが目に入った。
「・・・」
人影・・・あら、先客?まさか倒れてるんじゃないよね?
場所が場所だけにそんな恐れも少しは抱いて、私は恐る恐るベンチに近づいて行った。
ちょっと足運びを慎重にして、音を消して回り込む。すると視界一杯の、大きなスニーカーが目に入った。それからボロボロの汚れたジーンズ。黒いTシャツにお腹の前で組んだ腕。長い茶色の髪をベンチから垂らして、男性が寝ていた。
「あ―――――――」



