3つのR



「君だってなろうと思えばなれるんだよ。別に血が悪いとか、先天的な持病があるわけじゃあない。ただ、全てが細くて血流が悪い、疲れやすい体質なんだ。だから改善は出来るはず、ずっとそう言ってただろう?」

 まあ、それは判ってるんですけど、口の中でゴニョゴニョ返す。確かに自分から改善しようと努力したかと言われると、詰まってしまう過去しかない私なのだった。

 血圧も測ってから、先生はいつものようにパンと両手を合わせた。

 それは診察が終わったという合図なのだ。私は立ち上がって深深と頭を下げる。

「大丈夫、前に比べたらずっとよくなってるよ。新しいことも始められるはずだよ」

 
 診察室を出てから廊下を歩きながら、それは確かにそうだよね、と思った。

 離婚直後の私は本当にボロボロだったのだ。いや、むしろ殆ど無理をしていなかった体は元気だった。だけれども、心の方にとてつもない疲れがあって、それで毎週のように高熱を出して倒れていたのだ。

 その度に村上先生に診てもらい、慰めの言葉を貰っていたのだった。あの頃に比べたら、私、かなり元気になってるんだから。自分で頷いて確認まで取る。

 私がまた倒れたとどこからか話を聞いて見舞いに来た元夫には、そんな姿を見せたくなかった。ただでさえやつれているらしいのにまた心配させてしまうのが嫌で、会うことはずっと拒否してきた。だけど、それは今では自分の為だけのことで、彼の為にはなっていなかったと判る。

 私はまた、更に彼を傷つけたはずだ。