そんな父に対して母はなんとも思わないのか?


あなたたちが物分りできるようになって感じてきてるだけで前からこういう人だと母はいつも言う。


嘘だ。

私の中での父親とは日曜日や祝日やお正月など休みの時にしか家にいない、

それでも優しい人だと信じきっていた。


休みの時だけは家族で机を囲んで食べることも少しだけどあった。

クリスマスは必ずディズニーへと家族で行っていたし、クリスマスに家族で行かない時は記憶の中で一度もなかった。

ディズニーランドへ行く時だけ家族は揃って居られて、

みんな笑顔で家族写真を必ず撮っていた。



優しい家庭で、どこの家族よりも仲のいい家族であると思っていた。

そう思いたかった。そう思い込んでないと気がおかしくなりそうだったのかもしれない。


だから違うって思いたかった。

本当のお父さんはこんなんじゃないって、何かの間違いだって思いたかった。



でも私は、このマンションを買って引っ越して来る前にいた一軒家のときに

父が母を殴ったところまともに見てしまったことがある。


なぜ母が殴られたのかとかそんなこと知らないしわかるような年齢ではなかったと思う。


何故かその時の記憶はすごくすごく鮮明で

今でも思い出せる。不思議なことに。


母が泣いて2階へ駆け上がって行った後ろ姿と

ほっぺを押さえて振り返った母の泣き顔とか怖い鋭い目つきとか

その時の母の泣いてた声とか。


消えずに覚えていて、

でもずっとずっと「私はあの時のこと覚えている」ってこと言えずにいて。


なんかね、私は大きくなるうちにあれは幻でも見たんじゃないかとか

夢の中の出来事じゃないかとか思いますます言い出せなくなっていた。


確実な事かと言われると自信ないし、何歳のときの話とか言われても記憶にないし

それ一度の事だけ記憶してるから


夢の話かと言われたらそんな気もしてくる。


あの時の父の姿が怖くてたまらなかった。



それを知っているから、母が言うことは事実であることは私が何よりわかってた。
わかってたのに、わかりたくなかった。

だって、お父さんがお母さんを殴るわけない。。。。

今見ているこの景色たちも全て嘘だ。

お姉ちゃんが殴られるはずがない。


家の物が次から次へと壊れていく、これが紛れもなく真実を語ってた。