もう一度、歩きたい〜claireの切実な願い〜

卒業間近になって

いじめのターゲットはあの子へと変わっていた。


みんなは分かってたけど、刃向かうのが怖かった臆病者。


いじめたら自分にかえってくるという言葉通り。


Mちゃんは泣きながら私に「ごめんなさい」と頭を下げた。

そして、「そばにいさせて、一人が怖い」と言った。


馬鹿野郎って突き放せばよかったのに、私はしなかった。

できなかった。


一番聞きたかった「ごめんね」が聞けたから。

私のかわりに今度はターゲットになってるMちゃん。



普通だったらここで「散々いじめといてどのツラ下げてこっちに話しかけてんだよ!二度と近寄んな!ばーか!!これが因果応報ってやつだよ、自業自得じゃねえか!私はこんなの毎日なんだよ、これであんたもわかるでしょ?いい気味」とか罵倒言って突き放すだろう。


でも私が彼女に言った言葉は違った。


「一緒にいたいなら、勝手にいれば?私は別にいいよ、どうでも。いじめのことだってさ、私はいじめられてもなんとも思ってなんかないから、気にしないで。だから私の前で泣かないでよ。泣いてる顔見たくないし。いじめは、無視するやつは最低だよ。私がそれを一番知っている。あんたはそれをしたんだ。ツライんでしょ?いいよ、一緒にいても。許したわけじゃないけどね」

私があの子へ言ったコトバ。

すごい意地っ張りだね、私って。


Mちゃんはずっと泣きながら「ゴメンネ」と小さく言いながらとなりでうつむいて歩いていた。


それからは学校でもいつもひっついてきた。

学校帰るときも一緒に帰ってあげた。

と言ってもどうせMちゃんは学校の近くですぐにバイバイになるから

結局一人で帰ってるようなもんだった。



私は帰り道、一人の時に
Mちゃんのいたグループの子たちに言われた。


「どうしてよ?あんなにひどいことしたのにあいつのことどうしてあんたはかばうの?」って。

どうしてだったのか、知らない。別にかばったわけじゃないし。


私は言った。


「みんなこそずるいんじゃない?一緒になっていじめてたくせに、言われてたのかどうか知らないけど。仲間外れが怖くて、一緒になってイジメしてたくせに。今更何?そんなにあの子をいじめ返して楽しいの?ついこの前まで仲良しのふりしてたくせに。女って怖ッ!!!」

私はそれだけしか言わない。
(笑)


2、3日後にはあの子は仲直りして元のグループへと戻れたみたい。

そのとたんに私への態度は冷たく上から目線に変わる。

それでも私は「Mのバカ!裏切り者〜」と言って殴るわけでもなく、知らん顔して何もなかったことにする。
戻れたんだもん、よかったじゃん。

私は流されやすいタイプではないし。そのぐるーぷに入るわけでもない。

すでにもう聞きたかった「ごめんね」が聞けたから、嘘でも一度戻ってきてくれたから。


嘘でも私を頼って戻ってきてくれたから。

それだけでなぜか許せてしまえるような気がした。