ある日、病気のこと話したいことがあると言われ
席につかされた。

神妙な顔をしてジッと何かこらえながら、《何から説明したら良いのか。》
というような顔をした父と
目の前に座って居るのにうつむき加減で、わたしと一切目を合わせない母。


「あのな、希の病気は、進行性の病気なんだ。病名は家族性痙性対麻痺(かぞくせいけいせいついまひ)というんだ。家族性ってのは遺伝性ってことで、つまり」

そこまで黙って聞いているわたしと、泣き出すお母さんの顔。

父「遺伝子に異常があって発症したんだ。遺伝子には二つあって、病気の原因になる遺伝子がお父さんとお母さん一つずつ持っててそれが希の場合二つとも持って生まれてきたんだ」

来空『ちょっと待って、私は脊髄小脳変性症ではないの?いや別にそんな遺伝子がどうたら言われても分かんないし。別に二人のこと責めるつもりは無いよ』

父「脊髄小脳変性症ではないから、1リットルの涙の子みたいに死ぬとかは無いんだ。ただ、歩くことができなくなったり、これから難しくなることは増えていくと思う。そのときは家族みんなで支えようって思うから心配しなくていい。それに病気だからといって他人に甘える生き方はしないでほしいとお父さんは思っている。病気や障害で歩けなくなったとしてもそれを盾にして武器にして人の善をいいことに横柄になるなってことをお父さんは一番に言いたい。」

来空『まって!え?歩けなくなるってことはさ、夢。私の夢はどうなるの?ていうか私何も聞かされてないよ先生にも病院の誰からも。』

母「ごめんね、希。この病気のことはお父さんとお母さんから話すって決めたから。あなたに病気を伝えて、あなたを残して、病院離れるのが怖かったの。」

父「ごめんな。諦めるしかないと父さんは思う。でも別の方法で動物と関わることできる仕事あるかもしれない。でも中途半端に期待はさせられない。希の病気は死ぬことはない。でも治らないんだ。今の医学では根本的に治療法はないんだ。生きてる限り、希の体は病気は、進行していく。」

来空『え、うそでしょ。。じゃあ私これから先はどうやって生きればいいの???』




こんなわけのわからない話を両親から聞かされるだけが今の医学なのか?


まあいい、つぎ入院するときにでもしっかり聞こうじゃないか。

そしてお医者さんからも、治るという言葉が聞きたいし、夢のこと諦めなくていいという言葉も聞きたい。


お父さんは何にもわかっちゃいないんだ。
私は動物の世話をして直接携わることが夢なのに、そんな別のことで私の夢が片付けられるわけないし、一番近くで手の届きそうなところに居て事務的な仕事するとかそんなんだったら私は死んだほうがマシだ。飼育員がそば通っても私は同僚でも部下でもないなら、そんなの嫌だ。
動物を笑顔にさせること、動物に恩返しがしたいと本気で思うこと、子供たちが笑う顔みること、「お姉さんありがとう」って言ってもらえること、尊い命が消えたり生まれたり、私はそんな命を命がけで守りたいと思うこと。私はまだ十代だけどそんなことをたくさん経験してきた。

来空『お父さん、ありがとう。本当のこと話してくれてありがとう。お母さんも、ありがとうね。泣かないで、私は大丈夫だから。私、自分のことかわいそうだとか思わないし、思われたくない。お母さんとお父さんの子供で良かったって本気で思ってるから。二人のもとにうまれてこれたから私は今ここにいる、病気持って生まれてきた私こそごめんね。たくさん迷惑も心配もかけると思うけど、私は頑張るから。負けないから。大丈夫だから。私は本当に大丈夫だから。』


お母さんが嗚咽あげて泣きじゃくる。
涙流す私の肩を抱きしめてくれたお父さん。

大丈夫だと、何回言っただろう。

大丈夫だと何回自分に言い聞かせていただろうか。

大丈夫だと言ってお母さんとお父さんの心配する顔を笑顔に変えたくて必死だっただろうか。


『大丈夫だよ、大丈夫。』