「ごめんね
これ俺から・・」

男はそう言って薔薇の花束の中から一本取り出して、笑顔であたしに差し出した。



その動作を見ながら反射的にあたしは薔薇を受け取った。


いつの間にか息も正常に戻っていた。



だけど・・



心が悲鳴を上げているようなドキドキが襲う。

今まで感じたことのない鼓動に戸惑いながらも
その男から視線が離れられない。

まるで時間がスローモーションのように動いている。

今のあたしには香る薔薇と男しか見えない。



気がつくともうその男はいなくて、慌てて追いかけたけど姿は見えなかった。


あたしの手には薔薇が残った。