面会時間終了前に俺は病室を出た。
「また、来るよ」
「うん、
待ってる」
嬉しそうに頷き手を振る。
ドアが閉まるまでずっと俺を見ていた。
このドアの向こうで、寂しさを隠し、必死で耐えている。
そんな姿さえ気付くことはできなかった。
「三輪さん、少しよろしいでしょうか?」
病室を出てすぐ菜花の担当医師に出会い、俺は医師の後を着いて行った。
「先日、奥さんはもって後1年と申し上げましたが・・
最近高い熱も続き体調があまりよくありません。
申し上げにくいのですが、そろそろ覚悟をして頂いた方が・・・」
覚悟?
何の覚悟をするんだ?
菜花は今日も笑っていたんだ。
楽しそうに笑って・・・
あの笑顔が消えるなんて
菜花がいなくなるなんて
考えられない。
考えたくない。
俺はまた逃げた。
何から?
菜花から??


