それから、俺は会社と病院の往復生活が始まった。
菜花は相変わらず笑顔で病人を感じさせない。
「無理しなくてもいいよ?
仕事疲れてるでしょ?」
菜花はそう言うけれど、毎日会いに来ていた。
同僚達は気晴らしにって飲みに誘ってくれるけど、そんな余裕はなかった。
がむしゃらに動いていた方が何も考えなくてすむ。
「どうなんだ?
菜花さんの病気は??」
昼下がりの午後、突然親父の呼び出し。
「今は安定しています」
「子供はどうなんだ?」
「はい?」
「跡取りは産めるのかと聞いているんだ」
それが、聞きたかったのか。
「今はそんなこと考える余裕なんてありませんから」
俺はそう言って社長室を出た。


