顔を上げようとしたその時・・
スーツを着た長い足が見えた。
薔薇男の正体を見極めるように視線をゆっくり上下に動かす。
両手いっぱいの薔薇で男の顔が見えない。
薔薇がゆっくり・・
本当にゆっくり下りてきて男の顔が見えた。
「えっ・・」
長いヒゲもなくて整った顔立ち、
小太りじゃなくて手足の長い長身で、
蝶ネクタイじゃなくてオシャレな柄のネクタイ。
嫌味な金持ちのセリフ
『君のようにキレイな薔薇をプレゼント』
なんて言葉も似合いそう。
あたしと店員さんとの会話で事情を察したのか、低い渋い声が降ってきた。


