薫は結沙の机をバンバンと叩きながら、こんなことを言った。


「だーかーら!ゲーセン行こうって言ってんの!」


「ゲーセン?どうして?」


結沙は首を傾げる。


「ゲーセンにある音ゲーで、友達とやったらポイントが貯まるやつがあるわけ。だから、それをやろうって言ってんの」


「ああ、そういうことね」


薫の説明に結沙は頷いた。


すると、薫はズバッと聞いてきた。


「で?お前は遊べんの?」


「え?いや、あの、その…。あ、いつ?」


「今週の土曜日」


「だ、だったら…。遊べるよ」


「マジ?よしっ!」


薫はそう言って笑った。


結沙は、顔が赤くなるのを感じた。


(あれ?私、なんで…)


結沙は戸惑った。


だが、結沙のそんな様子に薫は気付かない。


「真山と坂橋は?」


「あたしは無理。ちょっとその日用事があって」


「俺も無理。塾があるし」


「えー。お前らどっちも無理かよー。いいじゃん少しくらい」


「って言われても無理なもんは無理だし」


星菜はそう言って快活に笑った。


だが、その後意味深にニヤリと笑い、


「それに…ねぇ」


彰翔と視線を合わせる。


彰翔もそれに同意し、


「なぁ」


とつぶやいた。


結沙はきょとんとした。


「なに?何がそれになの?」


結沙がそう聞くと、星菜は結沙の背中をバシバシと叩いた。


「まぁ、結沙は気にしなくていーの!」


「そ、そう?」


結沙は何が何なのかよく分からなかったが、曖昧に頷いた。


そして、あ、と声を上げた。


「浅野くん、だったら友歌(トモカ)…尾川(オガワ)さんを誘ってもいい?ほら、一年の時同じクラスだった」


「んー、いいよー」


「ありがとう!」


結沙はホッとした。


(さすがに浅野くんと二人きりはちょっとダメ…。ってあれ、なんでダメなんだろ?ただの友達のはずなのに…)


結沙は自分のよく分からない感情を疑問に思った。


(どう、して…?)


しかし結論は出ず、遊ぶ予定を薫と考えているときも、朧気なままだった。