(確かに浅野くんの言う通り個人の自由だけど…。普通、授業の準備は授業が始まる前にするじゃない)


結沙はどちらかというと真面目な人間だ。


今までにクラス代表も何度か経験している。


だが、薫はどちらかというと不真面目な人間だ。


結沙は、薫の不真面目なところが少し不満なのだ。


(勉強も運動も、もともと素質があってやればできる人間なのに、ちゃんとしないなんてもったいない…)


結沙はハッキリ言って凡人だ。


体力に関しては凡人以下だ。


だが、努力によって学力は上の下をキープしているし、運動も彼女なりには頑張っている。


(だから、素質があるのに真面目にやらない人を見てると嫌なのよね…。宝の持ち腐れって感じでもったいない)


結沙が心の中でぼやいていると、薫は教材を持って戻ってきた。


その時、タイミングを見計らったように社会科の男教師が教室に入ってきた。


「遅れてすまん!じゃあ、授業を始めるか」


「姿勢、礼」


クラス代表の声に合わせて、生徒たちは動く。


『お願いしまーす』


この間にも、結沙は礼もあいさつもしたが、薫は我関せずというように黒板をボーッと見ていた。