「ん?ああ……福宮か」


薫はそう言ったきり黙ってしまった。


(嘘…ど、どうして浅野くんが隣に!?)


結沙が驚いていると、後ろの星菜が声をかけてきた。


「結沙ー?どうかした、ボーッと突っ立って」


「え、あ、ううん、なんでもない!」


結沙は急いで机から床にイスを下ろし、座った。


そして、星菜に話しかけようと後ろを向いた瞬間、星菜の隣が目に入りさらに驚いた。


「え、坂橋(サカハシ)くん!?」


「あ、福宮か。俺は今隣が真山ってのに驚いたばかりだってのに、今度はお前か」


「わぁ、久しぶりだね!こうやって会話するのって、中一の時以来じゃない?」


「確かにそうだな。ま、よろしくな」


「うん、こちらこそ!」


坂橋彰翔(サカハシ アキト)とは、中一の時に同じクラスで隣の席になったことがあり、共通の趣味――アニメやマンガなど――があったためとても仲良くなった。


だが、中二でクラスが別れてからは疎遠になっていたのだ。


(隣に浅野くん、後ろに星菜、斜め後ろに坂橋くん…。い、一体どうなるんだろう…!なんだか、楽しみだなぁ)


結沙はこれからの日々に、わくわくと胸を弾ませた。


ふと窓の外を見ると、雨はすっかりと止み、雲の切れ間から太陽がのぞいていた。