結沙は、どこか見知らぬ部屋にいた。


意識がボーッとしている。


すると、気が付くと目の前に薫がいた。


「浅野くんっ!」


結沙は、ためらいもなく薫に抱きつく。


薫は、何の抵抗もしない。


(ああ…あったかい……)


ずっとこのままでいたい。


結沙はそう願った。


が、それは叶わなかった。









ピピピピ、ピピピピと音を鳴らす目覚まし時計を叩き、結沙は体を起こす。


(はぁ…夢、かぁ…)


そりゃそうだよね、と苦笑する。


(私が浅野くんに抱きつく勇気なんてないし。それに、浅野くんに抱きついたところで、にらまれて罵倒されて嫌われて終わりだよ)


でも、と結沙は付け足す。


(あんないい夢なら、覚めないでずーっと寝ていなかったな…)


無意識にため息がもれた。