月曜日。


休憩時間になると同時に、結沙は机に突っ伏した。


(ああもう、さっきから余計なことばっかり考えてる…。あいつに意地悪される度に好きじゃないって思って、でもしばらく経ったら好きって思っての繰り返しだ…)


結沙の脳内は薫だらけになっていた。


結沙は小さく息を吐く。


(浅野くんのことは…好き…嫌い…好き…嫌い…大嫌い……好き。ああダメだ、結局好きなんじゃん。はぁ……まぁ、好きか嫌いかは取りあえず保留にしとこう)


この感情に、無理やり結論を出す必要はない。


いや、焦っても結論はでない。


(でも、浅野くんのことはかっこいいとは思うのよね。あと、笑った顔とかはかわいいし。特に照れ笑いがいいな。浅野くん、すぐ真っ赤になるんだから。ホント、分かりやすいよね)


結沙は心の中で笑う。


すると、誰かに頭を教科書で叩かれた。


いや、誰かではない。


大方、予想はついていた。


「っ……!」


結沙が顔を上げ横を見ると、理科の教科書を手にした薫がいた。


「おはよう」


「お、おはよう…」


結沙は苦笑しながら返した。


(やっぱりね…最近よく叩かれるからなぁ…。まぁ大して痛くはないし、手加減はしてくれてるんだろうけど)


手加減もなしに女子に暴力を振るう者がいたらそれは最低な者だが、と付け足す。


そこで、ふと気が付いた。


(あれ…私、『手加減してる浅野くんは最低じゃないんだよ』って思おうとしてる…?)


どうしてだろう。


私は浅野くんがいい人間だと思いたいのだろうか。


でも、そう自己暗示をかけたいということは、浅野くんがいい人間だと私自身が思っていないから?


(…ダメだ、分からない)


これは、どんな数学の問題より難解だ。