ゲーセンの入り口には、すでに友歌がいた。


「友歌ー!」


「あ、結沙!」


「ごめんね、遅くなって」


「ううん、大丈夫だよ」


結沙は傘を閉じ、店に設置してある機械で、ビニールの袋に入れた。


「よし、じゃあ入ろうか」


「うん。浅野くんは中に入るの?」


「そう言ってたよ。確か奥の方にある音ゲーの近くにいるってさ。まあ、もしあいつがいなくても私と友歌で遊べばいいよ」


「え!?」


結沙はそんな冗談を言いながら、本当に薫がいるのか気が気でなかった。


(もし浅野くんがいなかったらどうしよう…。いや、あいつはそんな約束破るやつじゃないし大丈夫だよ!あ、でも気分屋だし…)


結沙は自然と早足になる。


そして、待ち合わせ場所である音ゲーの近くに来た。


すると、そこには列に並ぶ薫の姿があった。


薫もこちらに気付き、驚いた表情になった。


結沙の表情も思わずほころぶ。


(良かった…ちゃんと浅野くんがいた…!)


薫は結沙たちに近付いてきた。


「じゃあ、やる?」


薫が音ゲーを見、結沙に尋ねた。


「うん」


結沙は頷き、列に並んだ。


友歌もその後ろに続く。


結沙はその時ハッと思い出した。


(そうだ、一緒にプリクラ撮りたいなぁって考えてたんだった!ま、まぁ、浅野くんが了承してくれるかどうかだけど…。とにかく聞いてみないと!)


結沙は振り返り、浅野に尋ねた。


「ねぇ、後で一緒にプリクラ撮ろうって言ったら…怒る?」


すると、薫は笑いながら首を傾げ、言った。


「別に良いけど」


「ホント!?やったぁ!ありがとう!!」


結沙は満面の笑みを浮かべた。


(ほ、ホントにプリクラ撮ることを了承してくれるなんて…!や、やばい、凄く嬉しいっ!)


結沙が心の中ではしゃいでいると、前の人たちがプレイし終えた。


結沙と薫と友歌はゲームの前で横に並んだ。


ゲームを始めると、まずは名前登録から始まった。


アルファベットで入力するようだ。


(えっと…『YUISA』で登録しようかな…)


我ながら安直だな、と思いながら結沙は始めのアルファベットを入力した。


が、操作に慣れていないせいかもたついてしまう。


すると、それを見かねたのか薫が隣から手を伸ばし、代わりに操作しだした。


そして、ふと尋ねる。


「入力は『YUISA』でいい?」


結沙は、自分の心臓がドキンと跳ねたのを感じた。


(えっ!?い、いま浅野くん、YUISAって…結沙って、私の名前言ったよね!?)


すると、薫が不思議そうな顔で結沙を見ている。


結沙はあわてて返事をした。


「う、うん!」


薫は再び画面を見、入力しだした。


結沙は、いまだバクバクしている心臓に、そっと手を置いた。