妖精デジタるーと

「ホントにいる…」

学校の帰り。


校門近くに黒い高級そうな車の前で、奏斗は待っていた。

いつもスーツにネクタイと眼鏡なのか。
しかも眼鏡は常備してるだけだ。


学校から出てくる人、みんなの視線は奏斗に向いていた。



通ってる学校は公立。

金持ちなんてめったにいないので、珍しい光景だ。


気づいているのかいないのか奏斗は、平常心で立っている。


「音色」


奏斗の横を通り過ぎる。


「音色!待ちなさい」


まさか、ここまで来るとは思わなかった。


「何故逃げるのですか!」

そりゃ逃げる。
怪しい他ない。

「うるさいなぁ!」

「音色、その人誰!?」

興味本位で聞いてきたクラスの友達の真紀が横で奏斗を見上げている。


「知らない人」

奏斗の顔が引きつった気がした。

「音色!!」


奏斗は怖い顔で追ってくるが、私が逃げるのなんて…自業自得だし。


「実際そうじゃん!!!」


「音色はまだ、事の重大さをわかってない」


「ちょっと…やめてよ、友達の前でおかしな事言うの。」

早歩きしていた足を止めて、奏斗の方を向いた。

この状況じゃいつもの浮かれたテンションを保てる気がしない。

「いいから、来て下さい」


奏斗に腕を引っ張られ、嫌々ついて行く。

「意味深…」

「違うから!真紀!この人知らない人だから!!」



誤解を招くといけない。
真紀は噂好きだから、嘘が知れ渡ったら、大事になってしまう。


腕を振り払いたいが、そうもいかなかった。


頭に残る…消えてしまう。


振り払ったら、本当に消えてしまうのか。