【続】恋愛のやり直し方

いちいち棘のある言い方をする人だ。


ふと視線を正面に向けると、初めてその顔をマジマジと見ることができた。

印象的な切れ長の目は、少しつり上がっていて、冷たい印象を持たせた。



顔のパーツは派手ではないのに、彼女からは華々しさが滲み出ている。




肌が透き通るように白くて、決めの細かい肌。


その肌にしっくりとはまる薄い水色の着物を着ている。


誰がどう見ても美人。



「私ね、こういう者なの。一応名乗っておくわ」


彼女は、脇にあった鞄から一枚の紙を差し出した。


社会人の経験の浅い私でも分かる。


名刺を差し出すときには両手を添える。





だけど、彼女は面倒なのをあからさまに、片手で寄越した。




着物と同じ薄水色の名刺を受け取り、眺める。





『緑風館 女将 腰越亮子』





緑風館……

私の頭のなかには、よくテレビや雑誌で目にする老舗旅館が浮かぶ。



「あの………もしかして、緑風館ってよくテレビなんかで目にする老舗の旅館ですか?」