【続】恋愛のやり直し方

その通りかもしれない。


この世に産まれ出て、一度も声を発しないまま亡くなる命もある。



自分の意思で生きられなかった命もあるだろう。



「君には、僕が不甲斐ないばかりに、とても辛い経験をさせてしまった。

だけど田代はね、暴れだした患者が雅ちゃんのお腹に蹴りが入りそうになったのを庇って手元の注射針を刺してしまったらしいよ。

つまりは、君の命を守るために」


「……」




「たからって、田代が君にしたことは許されるものじゃない。俺があの世に行けたなら、ガツンと一発やってやる」




パシンと拳を反対の手にあてる父の姿に自然と笑みが溢れる



きっと、本当に一発見舞って、その後は何事も無かったかのように許すんだろう。



「雅ちゃんから、聞いたんだ。綾ちゃんは、ずっと自分の存在を責めてるようだって。だから、君がいつかそんな事を思わないようになるまで、僕は何度でも言うよ


──綾、産まれてきてくれてありがとう」





「……っ」




気付いたときには、勢いよく父の胸の中に飛び込んでいた。