【続】恋愛のやり直し方

胸に埋めた顔を上げると、優しく微笑む母と視線が合わさる。





「これからは、暢気に直樹くんの隣で笑ってなさい。彼なら綾をきっと素でいさせ続けてくれるから」




「……うん」




頷いた私を見ると、安心したような顔をした母は、ニッと笑った。





「さて、しんみりは終わり。早く行かないと、男二人がオロオロと、待ってるわよ」


「えっ?あ……うん」




母の切り替えの早さに、着いていけてない私は、ただ何と無く頷いた。





「あら、嫌だ。その、顔を先に直してもらわなくちゃね。斎藤さんだっけ?お母さん、怒られちゃうかしら?フフフ……」


「……」




ポンポンと私の頭を撫で、斎藤さんを呼びに行く母の後ろ姿を、ボンヤリと眺めてると、ふと、肝心なことを忘れている事に気が付いた。








「お、お母さん。今までお世話になりました。ありがとう。私、幸せだから」



慌てて出た言葉は、驚くほど大きな声になってしまった。



一瞬足を止めた母は、「ありがとう」と振り返らず後ろ手を振って、そのまま部屋を出ていった