【続】恋愛のやり直し方

その瞬間、私の体は大きな腕の中に包まれていた。



大きな体は少し震えていて、「ありがとう。綾が巣立つその日まで、今までの分も合わせて大事にするから」と震える声で言ってくれた。




それから、すぐに私は『森嶋綾』から『紺野綾』になった。



名前が変わってウキウキするのは、婚姻の時だけじゃないんだ。なんて言ったら、「なんか妬ける」って友田は少しブスっとしていたけど、戸籍に記された『紺野綾』って字を何度も眺めて、私にできた父親の存在を単純に喜んだ。




紺野さんが実家へ引っ越しをしたのと同時に私と友田は元の家へ戻った。




少しの間だけ母と一緒に暮らした友田は、すっかり母とも打ち解けて、母も息子ができて嬉しいと喜んでくれていた。




二人だけの生活を再開してすぐに、友田のお父さんに挨拶に行った。



友田とはあまり似ていないお父さんは、少しの気の弱そうな人だったけど、緑風館の再建に必死に取り組んでいて、お祖父さんの残した緑風館を一新したい。なんて強気な発言もしていた。



それから、お母様の墓前に手を合わせ、ご挨拶もした。




友田の実家にも挨拶に行った。


私の素性を事前に知らせていたらしく、きちんと根回しをしていた友田のお陰で、私の心配は取り越し苦労に終わった。