治療法の見つからない感染症を抱えて、医師を続けられるはずはないたろう。



「医師以外の職に就けないなら死んだ方がマシだと言ってるような人だもの。どんどん荒れていって、遂に綾に……」




「気付いてあげられなくてごめんね」と顔を覆って泣きながら弱々しく謝罪した母



田代という人が荒れた経過が分かったところで、私を虐待した理由にはならないと思う。



私の中に虐待されていた記憶が無いから、恨んだり憎んだりする気すらないのだけれど、

自分に向けられる敵意から身を守るように意識を失うという術を、身に付けさせられた事は、恨んでる。



そのせいで、私は窮屈な生き方しかできなかった。



だけど、私は怖かった。
お互いを知る過程で衝突したとき、私が意識を失う事を受け入れてもらえなかったら……と思うと、人と深く付き合うことを避けてしまった。




それがいつからか、人付き合いが苦手になってしまった。