【続】恋愛のやり直し方

私の顔の変化に、母の方も覚悟を決めたように見える。



今にも泣き出しそうなのを堪えているかのように固かった表情も、柔らかくなった。





「医学の世界って、凄く狭いのよ。誰かの成功は誰かの命を長らえる事に繋がるって事を忘れている人……

ううん。最初からそんな考えもしない人達が大勢いるの。

だから、素直に人の成功を喜べなくてあら探しや、足を引っ張り合いをする……」




心底うんざりしたような顔の母は、いったいどれ程の人間の醜さを目の当たりにしてきたのだろう。





「だから、そんな小さな世界にこの人を入れてはいけないと思ったわ。だから、あなたに絶対に知られてはいけなかった。


綾があなたの子だってことを……」






心の片隅で『もしかしたら……』と思っていた予感だけれど、現実に母の口から出た言葉は、やっぱり受け止められないほどの衝撃を与える。




グラリと体が揺れたのが分かった。


それを支えてくれる友田の腕の感触もしっかり感じられるのに、心と頭は動かない。