自分の死がいつ訪れるのか分からない病を抱えた人間の心理なんて、到底私に想像なんてできない。
1日、一分、一秒が当たり前に思えない日々。
「そんな頃、私のお腹に綾がいるって分かったの」
「え?お母さんは……紺野さんではなくて田代さんと?」
先程までの話の流れでは、母の相手は紺野さんだと思うのが自然な流れだ。
だけど、私の父親は田代なのだ。
私の投げかけた疑問に、2、3度首を振った母は、フゥーっと大きく息を吐いた。
「お腹に子どもがいると分かった時、私は迷わなかった。結婚もしてないのに、先に子どもができたなんて、普通なら動揺するものなのに、不思議ね。
直ぐに日本に帰ろうと思った。看護師としては失格ね。現場を放り出すんだから。でも、綾を守れるのは私しかいないと思うその一念だけだった。
そして私は紺野さんに──」
「別れを告げられたね。
綾ちゃんの推測通り、僕は雅ちゃんを一人の女性として愛してたよ。だからこそ、彼女が一人で帰国するという話は、寝耳に水だった」
1日、一分、一秒が当たり前に思えない日々。
「そんな頃、私のお腹に綾がいるって分かったの」
「え?お母さんは……紺野さんではなくて田代さんと?」
先程までの話の流れでは、母の相手は紺野さんだと思うのが自然な流れだ。
だけど、私の父親は田代なのだ。
私の投げかけた疑問に、2、3度首を振った母は、フゥーっと大きく息を吐いた。
「お腹に子どもがいると分かった時、私は迷わなかった。結婚もしてないのに、先に子どもができたなんて、普通なら動揺するものなのに、不思議ね。
直ぐに日本に帰ろうと思った。看護師としては失格ね。現場を放り出すんだから。でも、綾を守れるのは私しかいないと思うその一念だけだった。
そして私は紺野さんに──」
「別れを告げられたね。
綾ちゃんの推測通り、僕は雅ちゃんを一人の女性として愛してたよ。だからこそ、彼女が一人で帰国するという話は、寝耳に水だった」

