【続】恋愛のやり直し方

「まだウィルスの特定も、感染原因もはっきりとはしていない時よ。なのに、私たちは、未熟な知識のまま診察を……

そして、今思えば当然の事故。

ろくに医療を受けた事の無い地域の人達よ。血液検査の為に採血するのが初めてだったその患者は、不安から暴れ出し、その針先が田代の左手に刺さってしまった……」



「え……」



「今でもその時の彼の顔を忘れない。真っ青で震えてるの。左手からは、彼の血が滴り落ちてるのに、止血もせず立ち尽くしてた」




ギュッと目を瞑り、その顔をしっかりと思い出そうとしている母はやっぱり強いと思う。



「その騒ぎに駆けつけた先輩医師達によって、田代は隔離室へと連れていかれた」


「……じゃあ」




「そう。彼は感染してしまった。当時、原因も感染ルートも分からない。もちろん治療法だって無い。ウィルスに感染したら最後。死が訪れるのを待つだけ。

発病期間は人それぞれ、明日なのか1年、5年……10年先なのか、まだ誰も分からない病」