【続】恋愛のやり直し方

二人の間に流れる空気が、昔を懐かしむそれだけではないように感じる。



もしかして──





「あなたと24時間共にするのはとても嬉しかった。幸せ惚けしてたんだと思う。未来永劫ずっとそんな時間が続いていくんだと当然のように思ってたの」



初めて見せる母の女の顔。



戸惑わない訳じゃないけど、母にも男の人とそんな幸せな時間があったのだと思うと素直に嬉しい。




私の父との思いでは、母にとっても辛いものであったはずだから……




「そんな時よ。田代の事故が起きたのは
……」



『田代』という名前に記憶の奥底がズキンと痛み出す。



私の父親の名前だ。



気持ち悪い程度に早まる鼓動。



頭の先から血の気が引いていくのが分かる。




「大丈夫?」



私の異変を敏感に感じ取ってくれる友田が私にしか聞こえない程の声で聞いてくれる。



それにうん。と頷くことで答える。



本当は逃げ出したい。だけど、ここから逃げてはいけない気がした。




「田代もね私たちと共に働く医師だったの。彼もまた志が高くて、勤勉家だった。

学ぶことに貪欲な人でね、寝食惜しんで働いていたわ」




「そうだったね。若い医師の中ではダントツだった」