そっと近づき、布団から出ていた手を握る。



この前この手に触れたのはいつだっただろう。




随分と昔に記憶していた母の手とは違っていた。


こんなに骨張った手ではなく、ふんわりと柔らかかった。



だけど、手の甲全体に走る傷は、母のものだ。




そうだ
この傷が、私を父親から庇ったときにできた傷だと知ったときから、この手に触れることを躊躇うようになったんだ。




「小さくなっちゃったね……お母さんの手」




強く握れば折れてしまいそうな手を両手でそっと包む。



真っ青な顔とは逆に、その手はほんのりと暖かくて、母が生きているんだとやっと実感できた。




仲の悪い母娘では無かった。

楽しいときは二人で笑い、悔しいときは私よりも悔しがって泣いてくれた。



悲しいとき……寂しいとき……は、一緒にいなかった。



私がこの二つの感情を母に素直に言えたのはいくつまでだろう。