【続】恋愛のやり直し方

「今日はお仕事じゃ無かったのね」


「まぁね」



「大事な方なら、先に言っておいてもらえれば、もっと特別なおもてなしが出来たのに。今からだと、大したことは出来ないじゃない」




「いいよ。彼女も緊張してるみたいだから、特別なんていらないの」



「あら、そうなの?あなたもしかして突然連れてきちゃったんじゃないでしょうね」






二人の雰囲気から親しい仲だってことは伺える。


きっとこういう場所は接待で使うんだろうとは思うけど、それにしても二人の間に流れる空気が自然すぎる。



それに、いくら親しくたって『あなた』って言い方をするはずがない。




「あの……お二人はどういうお知り合いなんですか?」


恐る恐る立花さんに聞いてみる。
すると、立花さんが口を開く前に彼女の方が「まぁ、それも話さずにきたの?」とあきれた口調で立花さんを睨み付ける。



そんな彼女の一睨みに、苦笑する立花さん。



いつも余裕な立花さんがまるで叱られた子供みたいだ。





「ごめんなさい。事情を知らされずに来たのなら、不愉快に感じられたでしょ?
自己紹介が遅れました。

女将の錦野三枝子(にしきの さえこ)と申します」



「も、森島綾です。立花さんにはいつもお世話になってます」



錦野さんのご挨拶は、一つ一つの所作が完璧で、さすが高級料亭の女将を務める方だと思った。