「でもね、今日は綾の中に誰がいても俺のために時間を使ってもらうよ。俺はズルいから」



クスリと笑った立花さんは、やっぱり大人だと思う。


私の中に今だに友田が居座っているのを承知で気遣いの言葉をくれる。




敵わない人だ。




この人の余裕を無くしてしまえる存在がこの世にあるのだろうか。


もしも、そんな存在が現れたとしたら、その人こそが立花さんの運命の人なんじゃないかと思う。



今晩食事をしながらこのことを話してみよう。


その時、立花さんの頭の中に誰か浮かんでくれたらいいな。





そんな事を考えていたら、不思議と笑みがこぼれる。






「綾、そろそろ着くよ。マナーなんて気にしなくていいってすぐ分かるよ」




滑らかに滑り込むように停められた車。




どんな所だろうと窓の外に目をやるとーー







「た、立花さん……ここ……」