【続】恋愛のやり直し方

聞き覚えのあるその声に振り向くと、そこには、パリッとしたスーツを着た立花さんが立っていた。




「どうしているの？」



私の口から出てきた言葉は『こんにちは』でも『お久しぶりです』でもなく、失礼にもそれだった。


よくよく考えてみれば、ここは立花さんの家でもあり、この場にいるのがおかしいのは私の方なのに。



だけどそんな事、スポッと頭から抜け落ちていた私は、どうして立花さんは私が弱った時に現れるんだろうとそんな事を疑問に思ってしまったのだ。




私の問いかけに「なんでって綾……」
と苦笑した立花さん。





その言葉にハッと気がついた私。




「ご、ごめんなさい。ここ立花さんの家でしたよね……ハハハ私何言ってるんだろ」



立花さんは鋭い。
だから、私の疑問の真意に気がついては大変だ。




真理子とお腹の赤ちゃんの事で毎日忙しく自分を追い立てていた私は、友田の事を考える時間を自分に与えなかった。




なのに、ここに来て見ぬふりをしていた傷があっさりと口を開けた。






再び気付かなかった事にしようと自分を誤魔化す前に立花さんが現れてしまったために、今だこの傷はパックリと開いたまま。