「綾ーー」


「ちょっと外の風にあたってくるね。色々ありすぎて混乱しちゃった」




何が言いたげな友田の声を遮るように回れ右した。



その私の腕をガシッと掴んだ友田を振り返り見る。







そんな不安げな顔しないで………



その原因が自分だと思うとズキズキと心が痛む。






「ちょっとだけ。すぐに戻ってくるから」



捕まれた手とは反対の手で友田の手を引き剥がすと、振り返らずにまっすぐ玄関へと向かう。



もうこれ以上堪えることなんて無理だ。






後ろから友田が追ってくる気配がなかったことに安堵した。


逃げるようにこの部屋を出たくはなかったから。





「いってきます」



小さく言い残してドアを開ける。


閉まる瞬間振り返り部屋の中を目に焼きつける。




パタンとドアが閉まる音が、もう2度と帰えれないと言われているように聞こえた。






もう振り返らない。


これからまた一人で生きていくんだと自分に言い聞かせて歩を進めた。