【続】恋愛のやり直し方

逃げるようにキッチンへ入る。



コーヒーメーカーをセットしている手が滑って、床にコーヒー豆が散乱した。





「やだ………」




慌てて屈んでそれらを集めていると、突然私の手が捕まれた。




暖かくて大きな手。




いつも私に安らぎをくれるその手に捕まれて初めて、自分の手がひどく震えていることに気がついた。



「ここは、後ででいいから座って」



静かに私を落ち着かせるようにもう一方の手が背中を擦る。



いつもなら、それで安心できるのに………今の私にはそれだけでは落ち着けなかった。




「わ、私は大丈夫。それより、ごめんなさい。

私もさっきまで知らなくて ………ホントにごめ……ん……なさ」





最後まで言い終わらぬうちに涙で喉が詰まった。




悲しいのか、怒りなのか、絶望なのか、緊張なのか………もう自分でも分からない類の涙がこぼれた。



「綾が悪いわけじゃない」


「でも…」



「どちらかというと、謝らなくちゃいけないのは俺なんだ。綾の家の事情、ちょっと前に知ってた」


「えっ?」