【続】恋愛のやり直し方

「え………」



最初に声を出したのは私だった。

友田の「綾に緑風館の女将をさせる気はない」という言葉に思わず反応してしまったのだ。



それはつまり………




「それって、この人とは結婚しないってことね。
そうよね。

直樹が犯罪者の娘と結婚なんてするはずないわよね。私ったら………ごめんなさいね」



私への視線を急に軟化させたえりさん。

その微笑みは、うっとりするくらい綺麗だ。



「犯罪者って………」




その微笑みとは裏腹に、私へと向けられた残酷な言葉







『犯罪者の娘』



友田には絶対に知られたくなかった。
できることなら、数分前に戻ってえりさんの口をこの手で塞ぎたい。



だけど、一度口から音となって出てしまった言葉は消ゴムで消せるわけでもなく、確実に友田の耳に入っていった。




私に止めを刺すようにえりさんは言葉を続ける




「直樹、知らないかもしれないけど、この人の父親って、この人を虐待して暴行と傷害で捕まったのよ？なんでも前科があったみたいで服役までしてたっていうじゃない。

そんな人が緑風館の女将になるもしれないって思ったら、いてもたってもいられなくなっちゃって。

フフ………私の取り越し苦労だったみたい。あぁ、安心した」




そして、ゆっくりとカップに手を伸ばし



「あら、コーヒー無いじゃない。気が利かない人ね」


吐き捨てるように言い放った。




「今、淹れてきますね……」