【続】恋愛のやり直し方

声を掛けようと友田の顔を見ると、チラリと視線をこちらに向け小さく頷くと、すぐにえりさんの方へと向きなおした。



「お前と結婚するなんて、一言も言ってない」



私に向けられている声ではないけれど、それでも震えるほど冷たく地を這うような低い声



今までに聞いたどんな彼の声よりも低くて積めたかった。



私と同じように怯えた顔をしたえりさん


だけど、それはすぐに威嚇するような顔に変わる。



「直樹がどう思うかなんて問題じゃないの。私たちは結婚しなくてはいけないの。それは分かってるでしょ」



そこまで一気に捲し立てるようにいい放った彼女は、もうすっかり温くなったコーヒーに手をつけた。


その様をボーッと眺めながら、友田の次の言葉を待つ



それは、彼女も同じようだった。
ソーサーにカップを置いて、友田の顔をじっと見つめている。



次の言葉


それが、私と彼女のどちらかに微笑みをもたらす。


どちらが待つ言葉を友田の口から出てくるのか………それは、友田しか知らない。




静かに 流れていく時間



それに反して、私の心は穏やかではいられなかった。

友田を信じたい気持ちと、えりさんが言った『結婚しなくてはいけない』という私の知らない事情への恐怖心とが入り交じる。