ボーダーライン

山の中のここは夜になると一層冷えて、長袖の上着を羽織らないと寒いくらいだった(合宿のしおりの持ち物欄にも上着は絶対必要って書いてあったし)

「昨日あんなこと言ってごめん。びっくりするよね」

耳元で囁くアキの声は少しかすれていて、それがなんだか心地よかった。

「ううん。気にしてないし…」
「…そう」

背中でかすかにアキが溜め息をついた、ような気がしたけど、振り返るわけにもいかなくてそのまま踊る。

「ぜんぜん気にしてないかっていうとちょっと違うんだけど、ちょっとびっくりしただけ」

ステップが終わってターン。

アキの顔は陰になっていてよく見えないまま、私たちは隣のパートナーと挨拶をした。