Your smile once again

「わっ」

思いっきり振り払われた。
俺は驚いて身動きが取れない。

でも、確かに見た。

その手首に何かで切った無数の傷痕があるのを。

「お前、それ……」

声をかけても、彼女は一言も発さなかった。

ただ、敵意をもった目で睨まれる。

彼女は、落ちていた自分のカバンを拾うと、俺の横をすり抜けて行った。

「ありがとう、ございました」

小さな声が、聞こえた。
澄んだ声だった。

「っ!」

慌てて振り向くけど、声をかけることは出来なかった。

「不思議な、子」