何かが、頭に触れている。

前髪が、額にかかる。

心地よくて、安心する……。
ずっとこのまま……。


「-----っ!」

目を覚ました瞬間に、飛びのいた。

目の前には、いつものように私の正面に座る笹原の姿。

反射的に時計を見ると、まだ5分ほどしかたっておらず、部活は始まっていなかった。

「佐々木」

低く、囁くように、私の名前を呼ぶ。

「わっ、私、えっと……」

あまりにも突然すぎて、頭が回らない。

バカだ、バカだ‼︎
私が図書室に来ることなんて、笹原ならわかるはずだ。
それに気づかないなんて。

無神経すぎる。


「帰るっ」

とっさに叫んで、カバンを持って出て行こうとする。