「佐々木さんっ!」


その声に振り返る。


「ね、ねぇっ!笹原くん、あの子の事なんて言ってた?」


私は、内心面倒くさがりながら、答える。


「前、近所に住んでた子らしいよ。」


その、クラスメイトは安心したように微笑んだ。


「……そっかっ!ありがとっ!」



……こういう風に遠慮しながら聞いてくる子はまだいい。私はそう思った。

笹原は、自分がモテるということをわかっていないのだ。

「佐々木!」


ああ、もうっ!私は一人になりたいのに……。

今度は何……。


「……日向」
「今年は同じクラスだな!」


日向葵。通称ひまわり。ザ・青少年って感じの爽やか系男子。

背が少し低くて、どちらかというと可愛い系。

ーーー香澄と怜音の、好きな人だ。


やめてよ。


「そうだね」
「一年間よろしくっ!じゃ、またあとで」



……用事はそれだけか。私は、ひどく疲れた気分になった。




チャイムがなり、みんなが席に着く。ガタガタと椅子の引く音。


「気を付け、礼」


授業が始まった。