――それにしても、世の中には冷たいヤツが多い。


未だに転んだ状態のままの彼女を、誰もが迷惑そうに避けながら通り過ぎていく。


中には、面白いものでも発見したかのように、彼女を見てヒソヒソと会話を始める人もいた。


まぁ……確かに面白くないわけではないけど……。


オレは再び彼女の方へと目を向ける。


「……仕方ないな」


ホームにはもうすぐ電車が来るというアナウンスが流れていたが、オレはどうしても彼女を無視してその場を離れる気にはなれなかった。


急いで乗った所でどうせ遅刻決定だし。
たまにはこんな日があってもいいかな、なんて。




もしも……。

もしもその時そう思わなかったら、オレがキミに恋をすることはなかったかもしれない――…。