「ちょ、ちょっと待てよ。

 もうちょっと何かあってもいいんじゃね?」


俺は那智を覗き込む。


「どうせ、可愛い客にちょっと笑顔を向けられて
  
 その気になってるだけじゃないの?」


確かに。
今まではそうだった。

だけど今回は違う。
こんなに誰かを考えるのはあの日以来・・・

「なんか、上手く言えねぇけど。そんなんじゃないんだよ。」

「恋?したんだ?」

那智は意味ありげな笑みを見せた。



したのか?俺?

「もう、あれから何年経つかな?」

那智が遠くを見るように目を細める。

俺の胸の中にチクリと痛みが走った・・・