[短編]One-Way ticket~仁の場合~

彼女が帰るのは決まってお店に来て一時間後。


俺はそれまで彼女に意識を集中させている


携帯をいじる訳でもなく
誰かを待ってるわけでもない
彼女はただグラスを見て目を細めたり
髪を触ったり


俺は声をかけていいものか
何を話そうか

{今日はお仕事の帰りですか?}

なんて一人で妄想してみたり・・・
悲しい


そんなこんなで
彼女は今日も帰っていく。


俺は華奢な背中を見送って店を閉める。


彼女が座っていたイスにはほんのり甘い匂いが残っていた


グラスについた唇の跡・・・


一瞬スポンジでこするのを躊躇ってしまいそうになる。

変態じゃん。


はぁ・・・以外にむっつりなんだ。