[短編]One-Way ticket~仁の場合~

携帯を鳴らし続けた。
何度もリダイアルボタンを押し続ける。


「おかけになった電話は・・・」



何度も聞いた。


何度も


何度も


何度も



何度目かも忘れた頃
やっと繋がった。


「アコ!?」


俺の声に帰ってきたのは
少しかすれた疲れきった
老けた声だった。


「どちらさまですか?」


「え?」


「・・・もしかして仁君?」


アコの母親だった。


何回かあって話したことがある。
アコによく似た大きな黒目の綺麗な人だった。


「あっ・・・お久しぶりです。
 あのぉ、アコは?」


しばらくの沈黙だった。


「・・・アコは亡くなりました。」


その後
うなるような声が聞こえた。
それが泣き声だと気づくまでに俺は何分も聞き続けた。