[短編]One-Way ticket~仁の場合~

俺は狐につままれた気分だった。


すぐに那智に電話して
必死になって
相談した。


「・・・だから、どうしたらいいんだよ!?」


「お前が悪い。」

冷たく冷静な言葉で那智は一刀した。


「はぁ?なんで俺が悪いわけ?」


「お前がアコにしてきたことの結果だろ?」


「俺が・・・アコにしてきたこと・・・?」


そのとき初めて俺はアコをどれだけ
傷つけてきたのか知った。


アコのおびえた顔。

アコの悲しい顔。

アコの寂しい顔。


よく考えて思い出せば
すべての原因は俺にあった。



「・・・でどうするんだよ?」


那智は相変わらず冷静でタバコをふかしていた。
俺のタバコは灰皿に落ちて燃え尽きていた。


「・・・アコを手放したくない。」


「だから?」


間髪いれずに那智が突っ込む。

「だから・・・アコに会う。」

会って謝ろう。
もう一度やり直せる。
俺たちはまだ終わってない!


「んじゃ、行ってらっしゃい。」


ひらひらと那智が手を振る。
俺はそれを確認もせずに走り出した。




アコ。
アコ・・・!

今行くから


今まで傷つけてごめんな?

今度は気をつけるから


だから


もう一度



馬鹿な俺を許してくれ。



もう一度


俺の腕の中で笑ってくれ。



心の中では何度もアコに言う言葉が浮かんでは消えていった。