[短編]One-Way ticket~仁の場合~

夏が近づいた頃
アコとの喧嘩が絶えなくなった。


何をやってても
言い合いになって


次第に二人でいる時間も少なくなっていった。


「ねぇ、仁。」


アコが上目で俺を見上げる。
そんなアコにも少しイラついていた。


「なんだよ。」


声にもあからさまに気持ちが出ていた。
本当はもっと優しくしたいんだ。
だけど
アコを見てるとイライラしてしょうがないんだよ。


お前はもっと綺麗好きだろ?
デニムなんて履くなよ?
他の男と話すなよ!


ダメだ。
俺はお前を見てるとイラつく。




「・・・いい。なんでもない。」


アコは怯えたように
飽きれたように
口を結んだ。



「何だよ。言えよ!」

その態度がより一層俺をイラつかせた。


「別れよう。」





え?



なに?



「はぁ?」


無意識に言葉が出ていた。
今・・・なんて言った?


「私たち、もうやっていけないよ。
 だから・・・別れよう。」




永遠なんてなかった


いや


あったとしても
俺には見えてなかった。


そして

おれ自身がその永遠をぶっ壊しちまった。