しかし、少年はその場から動かなかった。

魔王ゼイドラックと名乗る少女はため息を吐く。

「そんなに私を殺したいんですか?あなたたちは…。」

「いや…俺は…わからない…。ただここで君から離れたら駄目な気がするんだ…。」

そして、ゼイドラックはまたため息を吐いた。

「そんなに私から離れたくないんですか?」

ニヤリと意地悪そうな笑い方をする。
それに少年の顔が赤く染まった。

「…っ…いや!そういうわけじゃない…ん…だが…っ」

「わかりました。今のは冗談です。気になさらないで下さい。」

「…冗談…。」

「はい。この部屋から出るとたくさんの部屋があります。今日はそこに泊まってみてはいかがですか?」

「泊まる?いいのか?俺はお前を殺そうとした暗殺者だぞ?」

「ええ、構いません。私はそう簡単に死にませんから。」

ポツリとそう呟く、ゼイドラックを見て少年は魔王なんだなと改めて思う。

「ですが、その前にあなたの名前を教えてくださりませんか?ずっと君とかあなたで呼ぶのは疲れますから。」