カラン、
1ヶ月ぶりに店にあの人がやってきた。
「…浮かない顔だな、蝶子」
「あなたがなかなか来てくれないから拗ねてるのよ」
「本当か?俺の顔を見た途端、さらに顔色が暗くなった気がしたが」
そう言うとぐいっと肩を引き寄せ、耳元で囁く。
「明日は休みにした、久しぶりにお前の家で手料理でも作ってくれないか」
その言葉に面倒くさい素振りこそしても内心喜んで、部屋に入ったとたん玄関先でも求めあう、そのくらいこの男に堕ちていた、それなのに。
「…ごめんなさい、最近猫を飼い始めたのよ、まだ懐いてくれないからあなたにまで怪我させてしまうわ」
ピク、と男の手が止まる
勘の良い人だから気づいたかもしれない、けれどそれでもかまわない
「…代わりに明日の昼まで睦み合いましょう?ねえ」
言い終わる前に男がボーイを呼び、会計をすます
ふう、とため息をついて私も席を立った


